ニールセンのユーザビリティ10原則とは?チームの共通言語として活用する
10原則を、使いやすさの評価だけでなく、ユーザー目線で合意形成するための共通言語として活用する方法を紹介します。
Webサイトやアプリの改善について話していると、議論が個人の感覚に寄ってしまうことがあります。
「こちらの方がわかりやすい」「この操作でも問題ない」「事業として、この情報を目立たせたい」。立場によって、見ているものや優先したいことは異なります。
そんなときに役立つのが、ニールセンのユーザビリティ10原則です。画面の使いやすさを確認するだけでなく、チームがユーザー目線で話すための「共通言語」としても活用できます。
ニールセンのユーザビリティ10原則とは
ニールセンのユーザビリティ10原則は、Webサイトやアプリなどのインターフェースを評価するための基本的な考え方です。
厳密なルールや採点基準ではありません。ユーザーが迷う場所や、間違いが起きそうな場所を発見するための視点です。
1.システム状態の可視化
ユーザーが操作したとき、システムで何が起きているのかを伝えます。ボタンを押しても変化がなければ、操作できたのか判断できません。
- 読み込み中であることを表示する
- 保存が完了したことを知らせる
- 現在地や進捗を表示する
- 処理に時間がかかる場合は状況を伝える
- 操作の結果をスナックバーなどで通知する
2.システムと現実世界の一致
サービスを提供する側の専門用語ではなく、ユーザーになじみのある言葉や考え方を使います。
- 社内用語や技術用語をそのまま使わない
- ユーザーの行動に合った順序で情報を並べる
- 現実にある道具や行動を参考にアイコンを設計する
- ユーザーが普段使っている名称を採用する
プロジェクトに長く関わるほど、作り手は社内の言葉に慣れてしまいます。チームでは通じていても、初めて使う人には伝わらないことがあります。
3.ユーザーの主導権と自由
間違った操作をしたときに、取り消したり、前の状態へ戻ったりできるようにします。
- 入力や操作を取り消せる
- 前の画面へ戻れる
- 編集途中の内容を破棄できる
- 誤って閉じた内容を復元できる
- 不要な処理を途中で中止できる
すべての間違いを防ぐことはできません。間違えても回復できる状態を用意することが大切です。
4.一貫性と標準
同じ意味を持つ要素には、同じ言葉、見た目、操作方法を使います。
- 同じ機能には同じ名称を使う
- ボタンの色や形に一貫性を持たせる
- 一般的なアイコンや操作方法を採用する
- 画面ごとにナビゲーションの位置を変えない
- 同じ操作に異なる動きを割り当てない
以前関わったプロジェクトでは、同じ機能が画面によって別の名称で表示されていました。社内では同じ機能でも、ユーザーには別のものに見えていました。
5.エラーの防止
エラーが発生してから説明するのではなく、間違いが起きにくい状態をつくります。
- 入力できる形式や文字数を事前に示す
- 選択できない項目を無効にする
- 削除や送信の前に確認を入れる
- 入力内容をその場で確認する
- 誤操作しやすいボタンを離して配置する
ユーザーに注意を求めるだけでなく、間違いにくい仕組みをつくることもデザインの役割です。
6.記憶ではなく認識
前の画面で見た情報や操作方法を、ユーザーに覚えさせないようにします。
- 必要な選択肢を画面に表示する
- 入力例や補足を示す
- 過去の入力内容や履歴を確認できるようにする
- 現在選択している内容を表示する
- 次にできる操作を画面上で示す
作り手はサービスの構造を理解していますが、ユーザーが同じように覚えているとは限りません。
7.柔軟性と効率性
初めて使う人にはわかりやすく、慣れた人には効率よく操作できる方法を用意します。
- よく使う操作をショートカットにする
- 過去の入力内容を再利用できるようにする
- 検索条件や表示設定を保存する
- 初心者向けの案内を必要に応じて省略できる
- 繰り返し作業をまとめて処理できるようにする
初心者向けのわかりやすさと、慣れたユーザー向けの効率性を両立させます。
8.美的で最小限のデザイン
ユーザーの目的に関係のない情報を減らし、重要な内容へ集中できるようにします。
- 重要度に合わせて情報に強弱をつける
- 同じ内容を繰り返し表示しない
- 装飾を増やしすぎない
- その場で必要のない情報を別の階層へ移す
- 主な操作を見つけやすくする
単に画面をシンプルに見せるのではなく、ユーザーが判断するために必要な情報を見極めます。
9.エラーからの回復を支援する
エラーが起きたときは、問題の内容と解決方法を具体的に伝えます。
- 問題がある入力項目を示す
- エラーが起きた理由を説明する
- 修正方法を具体的に伝える
- 入力済みの内容をできるだけ保持する
- 問い合わせやヘルプへの導線を用意する
「エラーが発生しました」だけでは、ユーザーは次に何をすればよいかわかりません。
10.ヘルプとドキュメント
必要なときに、目的に合った情報を簡単に見つけられるようにします。
- よくある質問を検索できるようにする
- 操作している場所に合わせて説明を表示する
- 手順を短く整理する
- 図や動画で操作方法を説明する
- 問い合わせ方法を見つけやすくする
長いマニュアルを最初から読ませるのではなく、必要な場所とタイミングで情報を届けます。
10原則を、合意形成に活用する
10原則を使うと、「なんとなく使いにくい」という感覚を具体的な言葉にできます。
「ボタンを押した後に状態が変わらないため、処理が完了したのか判断できない」と説明すれば、問題とユーザーへの影響が明確になります。
私が関わったプロジェクトでも、画面に掲載する情報をめぐって意見が分かれたことがありました。事業側は情報を増やしたい。デザイン側は情報を絞りたい。そのままでは「載せるか、載せないか」という議論になります。
そこで、「ユーザーはこの画面で何を判断するのか」「その判断に必要な情報は何か」を整理しました。10原則をもとに考えることで、表示する情報の優先順位やタイミングを見直す案が生まれました。
どちらの意見が正しいかではなく、ユーザーにとって何が必要かを考える議論に変えられたのです。
プロジェクトでの使い方
最初からサービス全体を評価する必要はありません。会員登録、予約、購入など、対象となる操作を一つ選びます。
問題を見つけたら、次の内容を整理します。
- どの画面で起きているか
- どの原則に関係するか
- ユーザーへどのような影響があるか
- どのような改善が考えられるか
「一貫性に問題がある」だけで終わらせず、ユーザーがどのように迷うのかまで具体的に説明することが重要です。
10原則だけで判断しない
10原則だけでは、ユーザーがなぜサービスを利用するのか、どのような状況で困っているのかまではわかりません。
必要に応じて、ユーザーインタビュー、ユーザビリティテスト、アクセス解析などと組み合わせます。
また、「原則に書かれているから直すべき」と押し付けるものでもありません。10原則は結論ではなく、ユーザー体験について考えるための問いです。
まとめ
ニールセンのユーザビリティ10原則は、画面の使いやすさを確認するための代表的な評価基準です。
同時に、使いにくさを具体的に言語化し、立場の異なるメンバーがユーザー目線で議論するための共通言語にもなります。
10原則の価値は、すべての画面を機械的に採点することではありません。異なる立場のメンバーが、ユーザーにとって何がわかりやすいのかを、同じ言葉で話せるようになることにあります。