ニールセンのユーザビリティ10原則とは?
使いやすいインターフェースを考えるための10原則と、デザインレビューでの具体的な活用方法を解説します。
Webサイトやアプリを設計していると、「この操作はわかりやすいか」「ボタンはどこに配置すべきか」「説明を追加したほうがよいか」といった議論が発生します。
しかし、判断基準がないまま話し合うと、デザインレビューが個人の経験や好みに左右されてしまいます。
こうしたときに役立つのが、ヤコブ・ニールセンが提唱した「ユーザビリティ10原則」です。
ユーザビリティ10原則は、使いやすいインターフェースを設計するための代表的な考え方です。細かなルールを定めたガイドラインではなく、幅広いデザインに応用できる原則として整理されています。
ユーザビリティとは
ユーザビリティとは、単に「操作が簡単であること」ではありません。
ニールセンは、ユーザビリティをインターフェースの使いやすさを評価する品質特性とし、次の5つの要素に分けています。
学習しやすさ
初めて利用したユーザーが、基本的な操作をどれだけ簡単に理解できるかという視点です。
説明を読まなくても操作方法がわかることや、一般的なインターフェースの慣習に沿っていることが重要です。
効率性
一度操作方法を理解したユーザーが、目的をどれだけ素早く達成できるかという視点です。
頻繁に利用する機能へすぐにアクセスできることや、不要な操作を繰り返さずに済むことが求められます。
記憶しやすさ
一定期間使っていなかったユーザーが、再び利用したときに操作方法を思い出せるかという視点です。
操作方法が画面によって変わったり、独自のルールが多すぎたりすると、ユーザーは使い方を覚え直さなければなりません。
エラーの少なさと回復しやすさ
ユーザーがどのくらい間違いを起こすか、その間違いがどの程度深刻か、そして簡単に元の状態へ戻れるかという視点です。
エラーを防ぐだけでなく、間違えた後に修正できることもユーザビリティの一部です。
満足度
サービスやプロダクトを快適に利用できるかという視点です。
目的を達成できても、操作のたびに不安やストレスを感じるインターフェースは、ユーザビリティが高いとはいえません。
また、ニールセンは「必要な機能があること」と「その機能を使いやすいこと」を分けて考えています。
必要な機能がそろっていても、操作できなければユーザーの目的は達成できません。反対に、操作しやすくても、ユーザーが必要とする機能がなければ役に立ちません。
ニールセンのユーザビリティ10原則
ここからは、10の原則を実際のUI設計に置き換えて解説します。
1.システムの状態を可視化する
ユーザーが操作した後は、現在何が起きているのかを適切なタイミングで伝える必要があります。
例えば、ボタンを押しても画面に変化がなければ、ユーザーは操作が成功したのか判断できません。何度もボタンを押したり、途中で操作を諦めたりする可能性があります。
- 読み込み中であることを表示する
- 保存が完了したことを知らせる
- 現在地や進捗を表示する
- 処理に時間がかかる場合は状況を伝える
- 操作の結果をスナックバーなどで通知する
システムの状態が見えることで、ユーザーは次に何をすべきか判断しやすくなります。
2.システムと現実世界を一致させる
企業や開発者の内部用語ではなく、ユーザーが普段使っている言葉で伝えることが重要です。
例えば、社内では正式名称として使われている言葉でも、ユーザーにとってなじみがなければ意味が伝わりません。
情報の順番やアイコン、操作方法についても、現実世界の考え方やユーザーの認識に合わせる必要があります。
- 専門用語や社内用語を避ける
- ユーザーが使っている言葉を採用する
- 情報を自然な順番で表示する
- 操作と結果の関係をわかりやすくする
作り手にとってわかりやすい言葉が、ユーザーにもわかりやすいとは限りません。ユーザーリサーチを通じて、ユーザーが使う言葉や考え方を理解することが重要です。
3.ユーザーに主導権と自由を与える
ユーザーは、ときどき意図しない操作をします。
そのため、間違えたときに取り消したり、前の状態に戻ったりできる設計が必要です。
- 戻る操作を用意する
- キャンセルできるようにする
- 操作を取り消せるようにする
- 編集途中で画面を閉じる場合に確認する
- 重要な操作を確定前に確認する
一度操作したら戻れない設計は、ユーザーに不安を与えます。
特に、削除、送信、購入、解約などの影響が大きい操作では、ユーザーが自分で判断し、修正できる余地を残すことが重要です。
4.一貫性と標準を守る
同じ意味を持つ言葉、アイコン、ボタン、操作は、サービス内で一貫させる必要があります。
画面によって「削除」「消去」「取り除く」と表現が変わると、ユーザーはそれぞれが同じ操作なのか判断しなければなりません。
また、独自性を出すために一般的な操作方法を変えると、ユーザーがすでに持っている知識を利用できなくなります。
- 同じ操作には同じ文言を使う
- ボタンの役割と見た目を統一する
- 一般的なプラットフォームの慣習に従う
- 似た画面では同じレイアウトを採用する
- アイコンの意味を統一する
一貫性には、サービス内で統一する「内部の一貫性」と、OSやWeb、業界の慣習に合わせる「外部の一貫性」があります。慣習に沿うことで、ユーザーは新しい操作方法を覚えずにサービスを利用できます。
5.エラーを予防する
わかりやすいエラーメッセージを表示することも大切ですが、それ以上に重要なのは、エラーそのものを起こりにくくすることです。
- 入力可能な文字だけを選べるようにする
- 選択できない項目を無効化する
- 入力例や条件を事前に表示する
- 必須項目を明確にする
- 重大な操作の前に確認画面を表示する
エラーが起きてからユーザーに修正してもらうのではなく、正しい操作を自然に選べる状態をつくることが重要です。
ただし、すべての操作に確認ダイアログを表示すると、かえって操作の負担が増えます。影響の大きさや、元に戻せるかどうかを考えて設計する必要があります。
6.記憶させるのではなく、見ればわかるようにする
ユーザーに操作方法や情報を覚えてもらうのではなく、画面を見れば必要な選択肢がわかる状態をつくります。
例えば、前の画面で表示した番号を覚えて、次の画面で入力させる設計は、ユーザーの記憶に負担をかけます。
- 選択肢を画面上に表示する
- 過去の入力内容を候補として表示する
- 必要な説明を操作する場所の近くに配置する
- アイコンだけで意味が伝わらない場合はラベルを付ける
- 入力中に条件を確認できるようにする
「以前説明したからわかるはず」ではなく、ユーザーが必要なタイミングで情報を確認できることが重要です。
7.柔軟性と効率性を高める
初心者にはわかりやすく、慣れたユーザーには効率的に操作できる設計を目指します。
初めて利用する人と、毎日利用する人では、必要なサポートが異なるからです。
- 検索や絞り込みを用意する
- ショートカットを提供する
- よく使う機能へすぐにアクセスできるようにする
- 入力内容を再利用できるようにする
- ユーザーに合わせて設定を変更できるようにする
機能を増やすことが効率化につながるとは限りません。
誰が、どのくらいの頻度で、どのような目的で使うのかを考えて、必要な効率化を設計します。
8.美しく、最小限のデザインにする
画面には、ユーザーの目的達成に必要な情報を優先して表示します。
情報を追加するほど親切になるとは限りません。重要ではない情報が増えると、本当に見てほしい情報が埋もれてしまいます。
- 一つの画面に多くの情報を詰め込まない
- 重要度に応じて情報に強弱を付ける
- 不要な装飾を減らす
- 主要な行動を明確にする
- 必要に応じて情報を段階的に表示する
ここでいう「最小限」は、何も表示しないことではありません。
ユーザーが判断するために必要な情報は残しながら、目的と関係の薄い情報を減らすという考え方です。
9.エラーを認識し、原因を理解し、回復できるようにする
エラーが起きたときは、ユーザーが理解できる言葉で問題を説明し、次に取るべき行動を示します。
「エラーコード:E1001」と表示するだけでは、多くのユーザーは何をすればよいかわかりません。
- 何が起きたのかを伝える
- なぜ操作を完了できなかったのかを説明する
- 解決方法を具体的に示す
- 問題のある入力箇所を明確にする
- 入力済みの内容をできるだけ保持する
エラーメッセージは、失敗したことを知らせるだけのものではありません。
ユーザーが問題を解決し、目的の操作へ戻るための案内です。
10.ヘルプとドキュメントを用意する
理想的には、説明を読まなくても操作できることが望ましいでしょう。
しかし、複雑なサービスや利用頻度の低い機能では、ヘルプが必要になることもあります。
- 操作する場所の近くに補足を表示する
- よくある質問を検索できるようにする
- 手順を具体的に説明する
- ユーザーの状況に応じて必要な情報を表示する
- 問い合わせ方法をわかりやすくする
大量のマニュアルを用意するだけでは、使いやすいヘルプにはなりません。
ユーザーが困っている場所とタイミングに合わせて、必要な情報へアクセスできる設計が重要です。
ユーザビリティ10原則を実務でどう使うか
10原則は、デザインを評価する際の共通言語として活用できます。
例えば、ボタンを押しても結果が表示されない場合、「なんとなく不安」という感想で終わらせるのではなく、「システムの状態が見えない」という原則に沿って問題を説明できます。
これにより、デザインレビューを感覚的な議論から、ユーザーの行動に基づいた議論へ変えられます。
1.評価する画面と操作を決める
最初に、どのユーザーが、どのような目的で、どの操作を行うのかを整理します。
一つの画面だけを見るのではなく、目的を達成するまでの一連の流れを確認することが重要です。
2.原則に沿って問題を記録する
問題を見つけたら、次のような項目を記録します。
- 該当する画面や操作
- 発生している問題
- 関係するユーザビリティ原則
- ユーザーへの影響
- 改善案
- 対応の優先度
原則をチェックすること自体が目的ではありません。どのようなユーザーが、どの場面で、何に困るのかまで具体的に整理します。
3.複数人で個別に評価する
ニールセン・ノーマン・グループは、ヒューリスティック評価を一人だけで行うのではなく、理想的には3〜5人がそれぞれ独立して実施する方法を紹介しています。
一人の評価者だけでは、経験が豊富であっても見落とす問題があるためです。個別に評価した後で結果を統合すると、より幅広い問題を発見できます。
ただし、実際のプロジェクトでは、必ずしも人数をそろえられるとは限りません。
まずはデザイナーやプロダクトマネージャーがレビュー時の観点として利用し、重要な画面から小さく始める方法も有効です。
4.問題の重大度を考える
発見した問題をすべて同じ優先度で修正する必要はありません。
- ユーザーが目的を達成できなくなるか
- 発生する頻度は高いか
- 回避や復旧ができるか
- 事業上の重要な行動に影響するか
- 修正によって別の問題が生まれないか
こうした観点から影響を整理し、優先順位を決めます。
ユーザビリティ10原則だけでは十分ではない
10原則は、インターフェースの問題を発見するうえで有効です。
しかし、原則を満たしていれば、必ずよいユーザー体験になるわけではありません。
ユーザーが本当に必要としている機能なのか、利用環境に合っているか、サービスを利用したいと思うかといったことは、原則だけでは判断できないからです。
また、専門家によるヒューリスティック評価は、ユーザーリサーチやユーザビリティテストの代わりにはなりません。ニールセン・ノーマン・グループも、専門家評価は実際のユーザーを対象とした調査を補完するものだと説明しています。
専門家によるレビューで明らかな問題を見つけた後に、実際のユーザーへ操作してもらうことで、作り手が想定していなかった課題を発見できます。
AI時代にもユーザビリティ原則は必要になる
生成AIを使えば、短時間で多くの画面やプロトタイプをつくれます。
しかし、生成されたUIが、ユーザーにとって本当に使いやすいとは限りません。
言葉がユーザーの認識と合っているか、操作の結果が伝わるか、エラーから回復できるか、一貫したルールで設計されているかといったことは、人が確認する必要があります。
AIによって制作速度が上がるほど、アウトプットの量だけでなく、何を基準に評価するかが重要になります。
ニールセンのユーザビリティ10原則は、AIが生成したUIをレビューする際にも、基本的な評価軸として活用できます。
ユーザビリティ原則は、判断をそろえるための共通言語
ニールセンのユーザビリティ10原則は、デザインを機械的に採点するためのチェックリストではありません。
ユーザーがどこで迷い、なぜ操作できず、どのように改善すべきかを考えるための原則です。
原則を共通言語として持つことで、デザイナーだけでなく、エンジニア、プロダクトマネージャー、事業担当者も、同じ視点から体験を議論しやすくなります。
使いやすさは、デザイナーの感覚だけで決めるものではありません。ユーザーの行動を想像し、原則に沿って仮説を立て、実際のユーザーを通じて確かめることが重要です。
ユーザビリティ10原則は、そのための基礎となる考え方です。